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  • Hanna Hirakawa

MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨

展覧会名:MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨

会場:東京都現代美術館 企画展示室 地下2階

会期:2021年7月17日 〜 10月17日


「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」は活動拠点や国籍を横断し、映像表現を追求する若手作家の潘逸舟、小杉大介そしてマヤ・ワタナベを紹介する。彼らは支配的に働く政治的・社会的な力と個人の葛藤を、身体というモチーフを通じて探求している。

本展示のコンセプトはコロナ感染禍において浮き彫りになった政治的・社会的抑圧や分断を受けて構想されたものだが、それらの問題に広がりを持って応答している点が興味深いと感じた。つまり、3人の作家が掲げるテーマにはパンデミックの間に顕在化した問題と通じる現在性があると同時に、視覚的にも意味内容においても過去の記憶と結びついている。また、解決の見通しが見えないままポストコロナ禍の未来にも続く問題と向き合っていると言える。

各作家のテーマを、政治的・社会的問題と個人の関係性に着目して捉えるとするなら、「国家と個人」(潘)、「病と個人」(小杉)そして「政治的・社会的闘争と個人」あるいは「生死と個人」(ワタナベ)と見ることができるではないか。上記のテーマは、例えば、国家間の移動の制御や社会システムに根強く残る人種差別、コロナウイルス感染による身体的影響や行動範囲の規制による精神的影響、そして政府の介入あるいはその欠如による暴力と繋がるだろう。作家の作品はコロナ禍におけるこうした問題を直接提示している訳ではない。しかし、時間や空間の枠組みを取り払うかのような表現を通じて、異なる境遇に置かれた現代の人々の現実と接続する。

本展示においてもう1点注目したいのは、各作家の映像表現とその特徴を強調させる展示方法である。潘のパフォーマンスを記録した静的な映像はモノクローム写真を想わせるのだが、それらが会場内に点在している様子を見ると、一つのナラティブを構成する記憶の断片を辿っている錯覚に陥る。また、ワタナベの新作《銃弾》(シングルチャンネル・ビデオ・インスタレーション、サウンド、2021年)はペルーの内戦中に犠牲者となった人物の頭蓋骨の中を見る作品であり、それは高さ2~3メートルに及ぶ湾曲した巨大画面に映し出されている。大きな壁となったその作品は、今日のペルーに暗い影を落とす過去の暴力を見る者の体に訴える。






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