福島合宿・8月12ー14日
- sumitomolab
- 2019年11月11日
- 読了時間: 6分
更新日:2019年11月13日
8月12日から14日の3日間、福島県会津地方にある昭和村で合宿が行われました。
本合宿は明治大学の鞍田崇先生の研究室と合同で行われました。

昭和村は人口 約1300 人の小さな村です。農業を営む高齢者が多く暮らしています。本州で唯一「苧(からむし)」という植物を栽培しており、「からむし織」を生産していることで知られています。また、カスミソウの生産も日本一です。この昭和村とからむしを巡って、生活文化や伝統、継承について考えていきます。
1日目

最初に訪れたのは、奥会津博物館。国の重要有形民俗文化財指定の収蔵品が5千点以上も収蔵されている博物館です。地元で使用されていた山村生産用具も多く収蔵され、当時の暮らしを知ることができます。現在ではあまり見かけることができない茅葺き屋根の古民家も保存されており、実際に入ることもできました。

奥会津博物館を後にし、いよいよ昭和村に入っていきます。
昭和村では、昭和村からむし工芸博物館を訪問し、からむしに関する基礎知識を学びました。写真が無いのが残念ですが、2014年から開設された道の駅「からむしの里」と同一の場所に建てられていて、ここを訪れれば、五感を通してからむしの文化に触れることができます。

滞在先は昭和村田舎暮らし体験住宅。夕食はみんなでカレーを作っていただきました。合宿でカレーを作るのは夏っぽいですね!
2日目

午前中は、菅家博昭さんのもとを訪問しました。昭和村のからむしと生活文化、歴史についてお話をお伺いしました。博昭さんは、カスミソウ農家の傍ら、郷土史家としても活動されています。

こちらが、元になるからむしの葉です。
からむしは、別名苧麻(ちょま)または、青苧(あおそ)とも呼ばれています。麻と繊維は似ていますが、葉の形は異なっています。

最近は、カラフルなカスミソウが人気だそうです。

昔と変わらない方法で、からむしの皮を一つ一つ丁寧に剥いでいきます(これが凄く難しいそうです)。最終的には、細い糸になるように、湿らせてから糸車でよりをかけていきます。
博昭さんの奥さんの洋子さん(写真上)は織姫制度で昭和村を訪れた一人。この制度は、昭和村が取り組んでいるからむしの後継者育成制度です。
私たちが訪れた時期は、からむし引き(繊維を取り出す工程)の盛期は過ぎていましたが、今回は特別にからむし織の制作過程を実際に見せてくださいました。
洋子さんが、からむし織をつくる姿には、美しさが感じられました。

博昭さんのお宅訪問の後は、お昼をやまか食堂さんでいただきました。味噌カツ丼がとても美味しかったです。

午後は菅家藤一さんの元を訪れました。藤一さんは、ヤマブドウを用いた編み組細工を手がける職人さんです。冬はマタギのお仕事もされています。

藤一さんの工房に集い、編み組み細工について話を伺います。使用している道具も全て手作りされているんだとか。

制作するのは、主にバックや小物入れ。大きさに合わせた木の型をストックし、用途に応じてサイズを選び、編んでいくのだそうです。

藤一さんの頭上にぶら下がっているのが、編み細工の元となる繊維です。
その土地にあるもので生活用品をつくり、日常のなかで使用してく。当たり前のようですが、東京でインスタントなものの中で生活している私達には、新鮮な営みのようにすら感じました。

次に訪れたのは、三島町の中心部にある「生活工芸館」です。
三島町は1950年代頃から「生活工芸運動」という、地域の手仕事を要とした町おこしを行ってきました。「生活の中の道具を自分で作る」という行為、ものづくりを大切に継承してきました。
三島町も昭和村の織姫制度を参考に、生活工芸アカデミーという後継者育成制度をはじめています。今回はその一期生の方のお話も聞くことができました。

最後は、三島町のゲストハウス・ソコカシコを訪れました。こちらは縄文遺跡の上に建っているそうです。オーナーの三澤真也さんは武蔵野美術大学ご出身です。奥会津の生活に魅了され、移住されて10年だそうです。三澤さんのアートのネットワークを使いながら行っているプロジェクトのお話を美味しい珈琲をいただきながら伺いました。

夜は、滞在先のご近所さんの粋なはからいで蒸かし芋をいただきました!ありがとうございました。
3日目


午前中は奥会津昭和の森を散策しました。丘に登ったので、昭和村を見下ろすことができました。

その後は、2班に分かれて行動です。1班は喰丸小学校へ。築80年を超える旧小学校が新たに交流・観光拠点として改装され、機能しています。私達が訪問した時には、からむし織製品の販売と、昭和村の野生動物達をとらえた写真展が行われていました。

懐かしい机と椅子に座りながら、喰丸小で働く方から、改めて詳しい昭和村の成り立ちについてお話いただきました。
また、鞍田先生から課題図書として推薦された柳宗悦の「用と美」についても触れながら、本滞在をそれぞれふり返りました。

実際に今年完成したからむしの糸を見せて頂きました。黄金に輝くような美しい色です。からむし織で帯一本を編むのには、経糸で平均50日〜60日、緯糸で平均40日~50日もかかるそうです。

その頃2班はというと、磐梯山八方台の登山をしていました。

1班はファーマーズカフェ大芦家さんで昼食をいただきました。

電車で東京へ向かう前に大内宿を訪れました。江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ道の宿場町として栄えていた場所です。現在も江戸時代と同じように茅葺屋根の民家が街道沿いに建ち並んでいます。昭和56年には国選定重要伝統的建造物郡保存地区に指定さています。昭和村とは異なり、土産物屋や食堂が多く、観光客で賑わっていました。

滞在中は、昭和村の資料館の人々、そして実際にそこに住む人々両者のお話を伺い、伝統を重んじながら、継承していくことの大切さと難しさを同時に感じました。
奥会津には織姫制度や工芸アカデミーを設けて、文化を受け継ぐ取り組みに力を入れていますが、実際にそれを継続させ機能させていくには、まだまだ課題がたくさんあるようです。
一人でも多くの若い人たちが、まずは昭和村を訪れて、このような生活文化があるということを知ってもらう。それが第一に大切だと思います。
私達も昭和村の滞在を通して、山と共存する人々の生活の営みから生まれる美しいものをたくさん見ることができました。特に「からむし」は新しい出会いでした。人々のお話を通して、受け継がれるべき価値ある伝統文化であると肌で感じることができました。
また、昭和村の人々が山に住まわせてもらっている、感謝の意識を持ちながら山と共存している姿が大変印象的でした。
鞍田先生の学生達との合同合宿、学生同士の交流もでき、実りある三日間となりました。
written by 田中直子


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