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「スティルライブ(Stilllive)ー制作プロジェクト」
文:権祥海

Stilllive2020: Contact Contradiction

会期:2020 年 12月 13 日

会場:ゲーテ・インスティトゥート・東京

 

アーティスト:乾真裕子, 小林勇輝(主宰)、遠藤麻衣、阪口智章、佐野桃和子、関優花、たくみちゃん、武本拓也、浜田明李、ハラサオリ、敷地理、中嶋夏希、仁田晶凱、野崎真由

制作・運営:権祥海

​写真:Yulia Skogoreva

映像:鐘ヶ江歓一

助成:小笠原敏晶記念財団、文化庁令和2年度活動継続技能向上等支援事業費助成金、東京藝術大学国際芸術創造研究科

ウェブサイト:https://www.stilllive.org/activity

 

スティルライブは、今回「Contact Contradiction」をテーマにコロナ禍が人々の関係性と身体表現に及ぼす影響に触れる。14人のアーティストが約2ヶ月間のワークショップを経て構成するパフォーマンスと記録映像の展示を行う。2019年、ゲーテ・インスティトゥート東京で開催したワークショップ・パフォーマンスシリーズに続き、現代に応答するパフォーマンスアートの創作を促す環境の構築を目指す。

 

ステートメント

 

コロナ禍により、人々は互いの体に触れ合うことを恐れ、安全のため距離を取り始めた。それは公共の場ではもちろん、近しい友人、パートナーそして家族にも及んだ。そしてパンデミックにより現代社会に潜んでいた様々な問題も浮き彫りとなった。同じ地球上で人間という種に生まれ、この疑わしい世界を生き抜くことが非常に挑戦的なように感じさせられたのだ。身体を用いるアーティストとして、これらの事実を通し、改めて観客を含めた他者と密接に関係する「パフォーマンスアート」であることの必然性とは、一体何かを考えさせられた。

 

現状では、アーティストが自らのエネルギーを観客に伝える従来のパフォーマンスは、困難な状況となっている。この「困難さ」には様々な原因があり、それぞれの条件に真正面から向き合うことでパフォーマンスの「ライブ性」を見直せないか、というのが今回のスタートポイントである。つまり今までやってきたものを「どう見せるか」よりも、この状況によって「何を導き出せるか」に焦点を当ててみるのである。それは、現在どこでも簡単に披露することができないが、どこにでも存在しうるパフォーマンスの本質を問い直すことでもある。

 

終息時期については様々な展望や意見があるが、多くの人々は、いずれはコロナから逃れて日常に戻れるという感覚を持っている。そう考えた場合、これからのパフォーマンスは、今までやってきた通りをそのまま続けながら、発表の時期を待つだけでいいのかもしれない。しかし一方で、この未曾有の状況を受けた現在こそ、パフォーマンスに関わるアーティストとして自らの身体で現代社会に応答し、2020年における「ライブ性」の定義や、その以降に向けたパフォーマンスの新しい標準を作り出す責任を担うべきではないだろうか。

 

今回のプロジェクトは、参加アーティスト一人一人によるワークショップと、そこから相互発見できる身体感覚をもとにした個人制作及び共同制作によって構成される。それは現状が何を意味しているかを一つの結論として括るよりは、一個人の身体に宿された感覚の接触地点を表出する過程と言える。表面的な連結や効率的な断絶といった矛盾した状況の中で、身体同士は現状の単なる再現ではなく、今まで想像できなかった表現のあり方を証言してくれるだろう。(文:スティルライブ)

 

「スティルライブ(Stilllive)」の活動

 

パフォーマンスアートプラットフォーム「スティルライブ」は、2019年アーティスト小林勇輝によって設立され、現代美術、ダンス、演劇などの様々な領域で活動するアーティストとともにパフォーマンスアートの創作環境の構築を目指してきた。2019年9月に行われた「スティルライブ2019」では、「ジェンダーとセクシュアリティ」をコンセプトに、日本における性ステレオタイプの商業化、社会的なジェンダーバランス、パフォーマンス作品におけるヌード性の自由と制限について問いかけた。ゲーテ・インスティトゥート・東京で行われた1週間のプロジェクトでは、アーティスト同士のワークショップ、パフォーマンスショーイング、フィードバックディスカッションが繰り広げられた。そして2020年12月に行われた「スティルライブ2020」では、コロナ渦において人と接することが大きく制限される中で、パフォーマンスアートがいかに現代社会に応答できるかを模索した。約3ヶ月に渡ったワークショップを通して、参加アーティストたちは各自コロナ渦で感じ取った身体表現の可能性をみんなで共有した。展示はワークショップの記録映像とともに、個人制作及び共同制作によるパフォーマンスとして公開された。

 

 

 

ウェブサイト・映像制作

https://www.stilllive.org

 

「スティルライブ」は、コロナが蔓延する2020年を機に「今、ここ」の感覚を記録していくことの重要性を切実に感じた。感染の拡大とともに観客を交えた作品発表が困難になっていく中で、「ライブ性」を前提とするパフォーマンスアートはいかに表現し続けることができるだろうかと。そういった状況に対する応答の一つは、ワークショップを通したアーティスト同士の対話や身体感覚の共有を淡々と記録していくことだった。その具体的な実践として、まず記録を公開していくウェブサイトや、パフォーマンスの記録映像を制作することを決めた。今回のプロジェクトにおいて、制作・運営として参加した私は、ウェブサイトのロゴデザインを発注したり、レイアウトを決めたり、映像制作・編集を依頼する仕事などを担当した。今後ウェブサイトは、プロジェクト記録の発信基盤として活用していく予定である。このようなインフラ構築によって、「スティルライブ」がこれからパフォーマンスアートの一つの創作拠点となり、様々な身体表現を実験できる受け皿として機能することを期待する。

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