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BEST 10 Exhibitions in 2019

今年初めての試み。2019年の間に見た展覧会のうち印象に残るものを各自が挙げ、それを見ていなかった人にも良かった点を説明し、そのなかから参加学生同士が選んだベスト10です。日本国内に限らず海外の展覧会にも目を向け、本研究科らしいセレクションになりました。今後はもっと日本の地方の美術館にも出かけてほしいと思う。

  • 「あいちトリエンナーレ 2019」/Aichi Triennale 2019: Taming Y/Our Passion

  • アーツ前橋/Arts Maebashi 「表現の生態系」/The Ecology of Expression: Remaking Our Relations with the world

  • Boan 1942(South Korea) "Der Prozess"

  • Gallery αM 「東京計画2019」/Plans for TOKYO 2019

  • 市原湖畔美術館 /Ichihara Lakeside Museum 「更級日記考ー女性たちの、想像の部屋」

  • DIC川村記念美術館/Kawamura Memorial DIC Museum of Art 「言語と美術 ― 平出隆と美術家たち」/Language and Art
    Takashi Hiraide and the Artists

  • 国立歴史民俗博物館/National Museum of Japanese History 「ハワイ:日本人移民の150年と憧れの島のなりたち」/Hawaiʻi: 150 Years of Japanese Migration and Histories of Dream Islands

  • ソウル市美術館/Seoul Museum of Art 「Will You Still Love Me Tomorrow?」

  • 台北市美術館 /Taipei Fine Arts Museum "Apichatpong Weerasethakul: The Serenity of Madness"

  • 東京都写真美術館/Tokyo Photographic Art Museum 「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」/Her Own Way Female Artists and the Moving Image in Art in Poland: From 1970s to the Present

  • (開催場所英語名アルファベット順)

「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」 (文:田中直子)

 2019年一番話題になったと言っても過言ではない美術展ではないだろうか。今回の騒動を通して一般鑑賞者や美術関係者が芸術に対してどのように普段接しているのかが垣間見えた。騒動も含めて芸術の意味を改めて考えさせられた。「表現の不自由展」に注目が行くあまり、メインの展覧会が注目されなくなってしまったのが残念でならない。全体的に見れば、キュレーター達が作り込んだ展覧会は見応えが十分あった。

 個人的には、タニア・ブルゲラの難民問題に訴えかける作品のインパクトはもちろん、アンナ・ヴィットの社会の階級制度へ問いかける映像作品、澤田華の写真というメディアを通して「真実」とは何かを考えさせる作品は、社会問題を扱いながらもユーモアがありどれも目を見張るものがあった。

 公的な芸術祭において現代美術を扱うことは様々なリスクを伴うが、そのような中でも芸術監督・津田大介氏によるジャーナリスティックな視点がよく表れ、社会派な作品が多くあった点は評価すべきである。その視点があったからこそ「表現の不自由展」も開催されたのかもしれない。個人的な意見としては「表現の不自由展」のコンセプトや問いかけには共感できるものがあるが、一展覧会としてのキュレーションの観点においてはどうしても違和感を感じる点もあった。取り扱う作品や作家の問題ではなく、それらを扱う際のキュレーションの大切さを改めて実感した。また自身がもしこのような展覧会を行う場合はどのようにすべきかを考えさせられた。しかし、芸術祭として作家の男女比に対する取り組みや、若手とベテラン、海外作家の比率を平等にするなどの取り組みは先駆的で、芸術祭のあり方をアップデートした。次のあいちトリエンナーレは無事に開催されて欲しい。またその時は日本における美術に対する考え方も変化していることを願う。

 

「あいちトリエンナーレ2019」あいちトリエンナーレ

​2019年8月1日―2019年10月14日

https://aichitriennale.jp/

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タニア・ブルゲラ《10,148,451》 2018
テート・モダン・ヒュンダイ・コミッショ
ン 撮影:田中直子

「表現の生態系」アーツ前橋/Arts Maebashi  (文:権祥海/ゴン・サンへ

 本展覧会は、「世界との関係をつくりかえす」という副題からも分かるように、我たちを取り巻く世界や環境を考えるための様々な領域における「表現」の可能性を新たにマッピングする(関係づける)ものである。この展覧会が評価できる理由の大きな一つは、一般社会や美術の領域において私たちの意識の内と外に存在する「他者」や「外部」を、「表現」の文脈から捉え直した点である。

 具体的な作品を挙げると、地域の福祉施設と長い時間をかけて交渉した上で作られた高山明のツアー・ガイド作品《続・前橋聖務日課―あかつきの村ウォーク》が印象に残る。作品の主要人物であるサンさんと佐藤さんは、社会から規定された「障害者」「難民」と「介護者」といった関係をはるかに超えるような生身の人間同士の交感を観客に伝えていた。

 同展覧会には、福祉やマイノリティに関する作品以外にも、人類学の観点からローカルや人間以外の存在を捉えた作品群や、神話や精神の観点から日本の近代を考える作品群など、私たちが日常の中であまり接することのできない領域も扱われた。このような膨大な生態系(展示)を経験することによって、自分が今まで持ってきた世界に対する偏見や固定観念が明らかに見えてきたと同時に、それらを解放させることのできる「表現」の豊かさを改めて感じることができた。

 

「表現の生態系 世界との関係をつくりかえす」アーツ前橋

2019年10月12日―2020年1月13日

https://www.artsmaebashi.jp

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高山明 / Port B. 《続・前橋聖務日記 あかつきの村ウォーク》 撮影:木暮伸也

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中村裕太 《群馬工芸の生態系》撮影:木暮伸也

"Der Prozess" Boan 1942(South Korea)(文:Jying Tan)
 
The film installation <Der Prozess.Der Prozess> was made based on The Trial, a novel by Franz Kafka. Its script is an adaptation of Kafka’s literary text and involved minimum direction. Space is a special factor in this work. Filmed at an art school, its space demonstrates a mix of the school building’s bureaucratic sections and artistic sections with miscellaneous elements. It is also a mix of novelistic space and actual everyday space. Most of the film was continuously shot in the same location from beginning to end. As it cannot depart from the closed space of a square shaped corridor and remains fragmentized, it is hard to find connectivity among spaces and entire structure. This hybridity is once again overlapped, proliferated, and fragmented in the gallery space with the history of an inn, representing the propagation and proliferation of desire, the keyword of this novel, as well as mobility in space.

This exhibition makes a foray into portraying a neighboring situation. A boarding house, a bank office, a courthouse, a lawyer’s home, and a painter’s studio are staged in each room. This exhibition also has an interactive form: viewers can opt to receive a call during their visit. A voice on the phone will then convey to an already arrested man, a message to appear in court. The history of this place is interesting to me. It was a hotel that turned into an art space. Hence, we are able to still see many of the hotel (leftover) features preserved in that space which give its uniqueness. In most of the rooms, you will be able to see how the display of the films on TV screens works well with the furnitures. Each room was set to look like a simulation of different settings such as a courtroom and a painter’s studio. 

Unlike the usual way of presenting videos in a dark and condusive room, the videos presented in this exhibition are rather open and bright. This enables us to associate the images in the video with the actual environment. However, it may be distracting to the audience who are watching the videos when other visitors passby. 

"Der Prozess" Boan 1942 (South Korea)
10/09/2019 to 25/09/2019
For more information: http://www.boan1942.com/calendar/jungwhajung_derprozess/

 

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Exhibition View 撮影:Jying Tan

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Exhibition View 撮影:Jying Tan

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Exhibition View 撮影:Jying Tan

「東京計画2019」Gallery αM (文:山縣青矢)

 

 Tokyo 2020に備え再開発の進む首都圏に直接的に応答する展示として本展の他に、解体前の戸田ビルを活用した藤本明が企画の「TOKYO 2021」にて黒瀬陽平がキュレーターを務めた展覧会が特に強烈であったが、これは東京オリンピックと大阪万博を見据えた鋭い問題提起のもと現況を映す多数の作品が混じり合うカオティックな空間だった。対して藪前知子企画で毒山凡太朗、風間サチコ、Urban Research Group、ミルク倉庫+ココナッツ、中島晴矢の合計5組の個展を連続開催した本展は、東京の今後に焦点を絞った上で個々の展示を積み重ねたことで、鑑賞者は会場に通いながらこの大都市について時間をかけて再考する機会を得られたように思う。(最後の中島晴矢展は見逃してしまったが)風間サチコの超大型木版画やミルク倉庫+ココナッツの実際に稼働するキッチンなど、それぞれ独自の異なる手法と問題意識により毎回造り替えられる地下の展示空間を体験できたことはスリリングであった。時勢に斬り込む批判精神のある実験的な展示の実現は非営利のギャラリーならではのものだろうか。

「東京計画2019」Galley αM 

2019年4月6日―2020年1月18日

https://gallery-alpham.com/exhibition/project_2019/

ヘッディング 1

「更級日記考-女性たちの、想像の部屋」市原湖畔美術館/Ichihara Lakeside Museum(文:宮川緑)

​ 更科日記の筆者が10代前半から40年ほどの半生を日記に綴ったのが、美術館のある現在の市原であるという。 展示は、彼女への手紙として書かれたテキストによって始まる。しかし、更科日記そのものではなく、その世界観をヒントに構成された点が、この展示の魅力だ。多様なメディアで表現された12組の女性アーティストの表現を通じて、日記とは何か、女性であることの政治性、社会的な評価、「女性の語り」の語られ方を問う。五所順子の《ツンベルギアの揮発する夜》の、日めくりカレンダーに施されたコラージュとびっしりと書き込まれた手書きのペン字は特に目を引いた。

  興味深く感じたのは、それぞれの作品と空間の相性の良さである。その理由の一つは、ちょうど一人分の部屋のように作品が佇むような、居心地の良さがあったからかもしれない。個々のアーティストの展示がフォトジェニックに感じたのも印象的だった。その視覚的心地よさは、インスタ映えと言えば語弊があるかもしれないが、女性のアーティストにとって無自覚にも自覚的にも選び取られた表現であるのか、気になった。

  声高に叫ぶのではなくこちら側からそっと近寄って、彼女たちの想像と創造の世界に浸る。ある人のプライベートな言葉の集積である日記を読むように、作品と自分とが一対一で向き合うことで親密な関係性が生まれる。私が心惹かれた作品の一つは、光浦靖子の愛らしい動物やキャラクターのブローチだ。誰にも邪魔されない、自分だけの大切な表現とともにある自分の生の、ささやかな幸福をにじませていた。髙田安規子・政子の不要となった誰かの日用品を用いたインスタレーションに刻まれた刺繍も同様である。

 

「更科日記考-女性たちの、想像の部屋」市原湖畔美術館

2019年4月6日―2019年7月15日

http://lsm-ichihara.jp/exhibition/2019spring

「言語と美術 ― 平出隆と美術家たち」DIC川村記念美術館/Kawamura Memorial DIC Museum of Art  (文: 杭亦舒/ハン・イシュー)


 美術は言語を使わず、形で思想を表現する芸術と思われることが多い。しかし思想と言語の必然とした関係性を考えれば、美術に纏う言語の影が見えるはず。「言語と美術 平出隆と美術家たち」は、詩人・平出隆の実践を筋とし、言語と美術の関係性を顕現させる展覧会である。
 平出は2010年代から紙の本の危機を感じ、活版印刷の衰退に対抗するために、封筒に入れた最小限の本《via wwalnuts 叢書》を考案した。2016年、その実践は「空中の本」の概念へと発展された。平出は「空中の出版行為」と称し、既に亡くなった架空の切手を作る作家ドナルド・エヴァンズに架空の葉書を送り、話しかけた。
建築家・青木淳は展示会場でその「空中の本」の概念に形を与えた。周りに4つの長方形の展示室と中央の1つの正方形の展示室で構成された「卍」字形のY室は、螺旋状の迷宮のように鑑賞者を言語と美術の共存空間に誘う。4つの長方形の展示室の縦方向のセンターラインに、平出隆による出版物は手がかりとして、浮遊する吊架線と透明梁の形で織り込まれた。
若林奮、中西夏之、加納光於とモーリス・ブランショ、瀧口修造とジョゼフ・コーネル、河野道代と岡崎和郎、平出隆と奈良原一高。言語と美術の交差で実現した「精神の交わり」は本展の真髄である。本展はそれを鑑賞者に押し付けてなく、造形美と空間のロジック関係で言語と美術の対話を空気のように展示空間に漂わせた。

「言語と美術 ― 平出隆と美術家たち」DIC川村記念美術館

2018年10月6日-2019年1月14日

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition-past/2018/language-and-art/

「ハワイ:日本人移民の150年と憧れの島のなりたち」国立歴史民俗博物館/National Museum of Japanese History  (文:宮川​緑)

 ハワイの日系移民の歴史について、プランテーションや強制収容、太平洋戦争から現代までをたどることができる展示である。解説パネルが多岐にわたり文字量が多い印象があったが、その分、日本とハワイをつなぐ複雑な歴史背景が多角的に示され、大変見応えがあった。

 特に政治的背景(米国の移民政策の変遷、政治情勢によって米国内のアジア系移民同士に生じた緊張関係など)と、個々のライフストーリーを重ね合わせることで、現在世界で直面されている排外主義や、日本でも問題化される多様なルーツをもつ人への差別や人権意識についての省察を促すものだった。いわゆる日本人学校の教科書や、ハワイの研究機関による日系人のデジタルアーカイブのみならず、現在ハワイ在住の日系人家族の集合写真も展示され、歴史は過去の記憶として葬り去られるものではないという強いメッセージを放つ。解説にも書かれていたが、人気観光地の南国ハワイというイメージを一度取り払い、ハワイへ長く移り住んだ無数の人々の存在を浮かび上がらせることが、展示の大きな要となっている。

 人はしばしば移動し、移住するという普遍的な事実に意識を向ければ、国籍やルーツをもとに人と人との間に境界線を引き、社会に分断と混乱をもたらすことの暴力性が明らかになる。もうすでに多様なバックグラウンドをもつ人々が暮らすいまの日本で、単民族社会という神話を崩し、隣に生きる人との差異を共に認めあうことの重要性を、本展ははっきりと示していた。

 

「ハワイ:日本人移民の150年と憧れの島のなりたち」 国立歴史民俗博物館

2019年10月29日―2019年12月26日

https://www.rekihaku.ac.jp/outline/press/p191029/index.html

「Will You Still Love Me Tomorrow?」 ソウル市美術館/Seoul Museum of Art (文:田中直子)

 韓国合宿の際に訪れた展覧会である。「高齢化社会」という極めて身近な問題にも関わらず、芸術の文脈において本問題のみにフォーカスした展覧会は無かったのではないだろうか。

 展示構成は3部に別れている。1部では特に資本主義社会の文脈で老化を観察し、2部では老化の様々なあり方を考察する。3部では老化の先にある死、そしてこれからの老化について考えさせる作品が並んでいるようだった。過剰に化粧をした女性たちのポートレイト、そこから個人における老いとの向き合い方を問う作品が現れる。最終的には病室のベッドと点滴の彫刻が現れ、その後かすかに息をしながら骨になってく身体をかたどった立体作品で終わる。人生の始まりと終わりを繋げるようなキュレーションがなされていた。

 「高齢化社会」は世界的な問題である一方で、その論点は国によって異なるだろう。本展は、美容大国である韓国らしい年齢に対するコンプレックスや年齢主義の諸問題が深刻であるということを訴えるメッセージ性の高い展覧会に感じられた。「歳をとる」ことは必ずしもネガティブに捉えるべきではないと思う。タイトルの「will you still love me tomorrow?」からも読み取れるように、明日への不安、将来への不安、そして死への不安を、私たちは日常のなかに抱え込んでいる。本展は、高齢化社会の真実を鑑賞者に語りかけ、未来への警告を静かに鳴らしていた。

 

「Will You Still Love Me Tomorrow?」 ソウル市美術館

2019年8月27日―2019年10月20日

https://sema.seoul.go.kr/ex/exDetail?exNo=403431&glolangType=ENG&searchDateType=CURR

"Apichatpong Weerasethakul: The Serenity of Madness" 台北市美術館 /Taipei Fine Arts Museum (文:Jying Tan)
Apichatpong Weerasethakul: The Serenity of Madness is a selective survey of the works of Weerasethakul. This exhibition presents more than 20 works following his practice from his first experimental films to his most recent works, ranging across media from short films to video art, video diaries, photographs and archival materials.

Weerasethakul explored themes of faith, memory and rebirth, often drawing upon narrative traditions of his native Isaan region. In both his narrative films and experimental projects, personal memories are interwoven with the ephemeral and supernatural, evoking the fluidity if distortions of history.

The Serenity of Madness is structured according to the artist’s intuitive response to the exhibition space and is divided into distinct parts. One corresponds to his private world, populated with beloved friends, family, and long-time collaborators; others consider the public through abstract dimensions of experience, such as light, memory, and the poetics of temporal, spatial and spiritual displacement. The survey culminates with a selection of recent work addressing the social reality in his homeland.
As a fan of Apichatpong Weerasethakul, I might be quite subjective in viewing this exhibition. However, the exhibition was designed by the artist himself despite of curated by Thai renowned curator Gridthiya Gaweewong. Therefore, the walking experience and the way works are exhibited are unlike the usual museum experience. Located at the 4th floor of Taipei Fine Arts Museum, the exhibition space is unlike the usual of other museums which may only encourage 1-way routing that contribute to a fixed way of walking in an exhibition. It allows audience to roam around freely without a fixed starting point as all rooms are interlinked.

Each room has a specific content and aesthetic. The visual atmosphere of each room allows us to immerse in the environment that Weerasethakul presented in his video works. Two of such immersive works would be Fireworks (Archives) and Haiku. Some of the projection screens use in this exhibition allows us to view from both sides – front and back of the screens. With such a technique in presenting videos, it also allows the projection to be reflected onto the floor and walls as well. This gave us a different dimension in viewing video works. 

All in all, the display and use of light (videos) in this exhibition to achieve the atmosphere that Weerasethakul wants truly creates a wonderful exhibition experience for me. 

"Apichatpong Weerasethakul: The Serenity of Madness" Taipei Fine Arts Museum
30/11/2019 to 15/03/2020
https://www.tfam.museum/Exhibition/Exhibition_page.aspx?ddlLang=en-us&id=661&allObj=%7B%22JJMethod%22%3A%22GetEx%22%2C%22Type%22%3A%221%22%7D

 

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Exhibition View 撮影:Jying Tan

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Exhibition View 撮影:Jying Tan

Exhibition View 撮影:Jying Tan

「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」東京都写真美術館/Tokyo Photographic Art Museum  (文:山縣青矢)

 今年は同美術館の「山沢栄子」展や東京都庭園美術館の「岡上淑子」展等これまで埋もれていた女性作家の制作活動を再検証する企画が注目に値したが、日本ポーランド国交樹立100周年を記念しポーランド女性映像作家の活動を時代背景を踏まえて明らかにした本展は画期的であり、人は芸術を通していかに自分を取り巻く環境に向き合えるかという終わりなき問いを力強く提示した。実験的な映像や身体を張ったパフォーマンス映像、大型映像インスタレーション、さらにに今時のネット動画風のものまでいずれも鋭い批評性を持つ幅広い形式の映像作品が広くはない地下空間に所狭しと紹介されていた。偏重した社会に今も挑み続けている彼女たちの実践は、異なる文化的背景を持ちながらも社会の中で芸術にできること、社会環境と芸術が地続きであることについて今の日本に暮らす人々にもたくさんのヒントを与えてくれるものであった。

「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」東京都写真美術館

2019年8月14日 - 2019年10月14日

https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3443.html

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