Marisa Darasavath
インタビュイー: マリサ・ダラサワ (Marisa Darasavath)
インタビュアー: 宮川緑
通訳:インタビュイーの友人、NIFAの学生2名
日時:2018年12月11日 15:00~16:30
場所:インタビュイーの自宅内アトリエ(ビエンチャン市内)
マリサ・ダラサワ(1972-)は、ラオスを代表する女性のアーティストの1人だ。今回のインタビューから感じられた聞き手の印象として、マリサは資本主義によって社会の様相が急激に変化したことへの違和感(危機感)を画面に込めており、多くの作品でラオス女性の家事と育児を担う姿を力強く描いてはいるものの、性差別への怒りを鑑賞者に強く訴えているのではない。それは、前回5月の訪問で女性のアーティストであることの苦労などについて尋ねたときの印象と変わらない。海外の研究者からは、度々「ジェンダー不平等な社会に対する不満を描いているのか」と質問を受けることが多いようだが、マリッサはあくまでもたくましく生きる女性の姿を祝福し、彼女らを色彩豊かに表現することに最大の関心を抱いているようだ。

マリッサの自宅アトリエにて

アトリエ壁面にかけられた作品の一部
-作品について
過去と現在のラオスの人々の生活を表現することに関心がある。お金がなくても自給自足的に暮らすことのできた時代と、生活のためにあらゆる場面で金稼ぎをしなければならない現代について。これからもっとラオスの伝統文化が失われていくと考えている。自分の記憶、他社の記憶が作品に反映されている。影響を受けた作家に、ダリがいる。画面の隙間を埋めるように描かれる点描は、画面を明るくし、また動きを出すために頻繁に用いている。
-国内での制作
国内外で多くの注文を受けている。制作には家族のサポートがある。家族がオーナーを務めるレストランの店舗に作品が飾られ、それを見た客から問い合わせが入ることも多い。収入を得るために注文作で表現を変えたりはしていないという。昼夜を問わず電話で作品売買に関する連絡を受けることもあり、値段交渉で時間を要する場合もある。
-ヌードについて規制はあるか?
抽象的に描いていれば撤去させられることはない。一度家族が経営するホテルにヌードを描いた作品がかかると、警察が取り外しにやってきて、自宅に作品を返送したことがある。
-海外での出品
2008~2016年まで、シンガポールのギャラリーによる助成を受けていた(ギャラリーが支援する5人のラオス人アーティストの1人であった)。海外での作品発表は、ラオスのアーティストとして誇りに思う。「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009」に出品(来日はしていない)。

制作中の作品も多かった